高度安定稼働を守り抜く使命
~マルスシステム~
5年、10年先の社会を見すえ次の『MARS』の理想的な姿を考える
旅客システム部 計画(開発PJ)
2013年入社
情報理工学研究科 数理計算科学専攻 修了
大学時代は真面目に研究課題に取り組みつつ、教職課程を取っていたこともあり、塾講師のアルバイトで中高生に数学や理科を教えていた。また休日には高校時代の野球部の仲間と草野球を楽しんだり、遊び歩いたりと、充実した日々を送る。入社後は一貫して『MARS』の開発に携わってきた。
全国規模で鉄道に関わり情報科学の知識が活かせる仕事
幼い頃に鉄道が好きだった、という方も多いかと思います。私もその一人で、マニアまでには至らなかったものの興味を持ち続け、鉄道に関係する業界で、大学時代に学んだ情報工学の知識が活かせる仕事に就きたいと考え調べた結果、鉄道情報システムを第一志望にしました。
決め手はやはり北海道から九州まで、JR全社のチケット販売を一元管理する『MARS(マルス)』の開発・運用を担っていることでした。『MARS』は1960年に誕生した『MARS 1』からの長い歴史をもつ、日本最大級のオンラインシステムです。この著名なシステムの開発に加わり、社内外の様々な方と関わることで、自分の成長にも結びつけることができると考えました。そして希望が叶って入社して以来、『MARS』開発部署の一員として社会に欠かせない大規模システムの今を支え、未来を考える仕事に携わり続けています。
チケットレスの次に本格化するゲートレス、シームレスの時代に向けて
『MARS』は多くの機能を有し、これらが連動することで初めて稼働するシステムです。座席の販売状況をリアルタイムで管理する「列車在庫管理機能」、発売金額を計算する「運賃料金計算機能」、駅の券売機やWebサイトなどからのユーザ操作に応じて、必要な情報を集約し、きっぷや画面に表示する内容を作成する「端末管理機能」、それらの操作や発売実績をビッグデータとして帳票やデータに加工する「情報管理機能」など、多種多様な機能があり、それらに対応した開発グループがあります。私が最初に配属されたのはそのいずれでもなく、「システム管理グループ」というインフラ寄りのグループでした。JRの指定券は基本的に1か月前の午前10時に発売開始されるため、10時からのごく短時間に、日本中から『MARS』へのアクセスが殺到します。この「10時」も含めて『MARS』が常に最適なシステムパフォーマンスを発揮するためにどうすれば良いかを検討し、性能設計やシステムチューニングを行いました。これを4年ほど務め、次に担当したのが「端末管理機能」の業務系ソフトウェア開発と保守。この担当も4年ほど務め、インフラ設計と業務系ソフトウェア開発の両方を経験した上で、半年前に現在の計画グループ開発PJに移りました。
現在当社が運用しているのは、2020年に稼働を始めた『MARS 505』。では次の世代の『MARS』はどうあるべきか?それを考えるのが今のグループの役割です。『MARS 505』はインターネット販売やチケットレス乗車の普及を見越して開発されています。ではこの先、鉄道業界にどのような環境変化が訪れるのか。カードやスマホを改札機にかざす必要もないゲートレスや、鉄道・バス・タクシーなどすべての移動手段がつながるシームレス化など、様々な技術革新が予想されます。そうした未来の社会を思い描きながら、次の『MARS』がどうあるべきかの検討を進めています。
「端末管理」システムの開発経験を次の『MARS』がどうあるべきかの検討に活かす
現在のチームには『MARS』の各機能の開発に携わってきたメンバーが集まっており、私はこれまでの経験から端末管理機能の将来像の検討を主に担当しています。現在のシステムの開発・運用担当者にヒアリングして、課題を洗い出し、解決のために必要なソリューションを考え、協力会社にも意見や提案を求める。未来のチケッティングシステムを一から構想するやりがいは大きく、経験豊富な協力会社の技術者との議論には学びや発見があって、自分の成長を後押ししてくれていると感じます。
この仕事で難しいのは、システムの信頼性を担保しながら、これまで以上のサービスを生み出す新技術をどう取り入れるか。鉄道利用の基幹を担うシステムだけに、構想段階から徹底してトラブルの芽を摘んでおかなければなりません。考え抜いたつもりの提案でも、上司から様々な問題点や課題が指摘され、自分の視野の狭さや経験不足を痛感することも少なくありません。ただ、前向きな提案や相談には、各分野のエキスパートが担務を超えて真摯に協力してくれる社内風土があるので、調査や関係者との議論、検討を重ね、斬新かつ信頼性にも優れたシステム構想へと高めていくつもりです。
お客さまに近い立場での仕事も経験し幅広い企画提案ができる人材になりたい
現在の目標は、自分の考えたシステム構想が次の『MARS』に盛り込まれ、鉄道利用者やJR各社の方に「使いやすい」「便利になった」と喜ばれることです。自分自身も鉄道利用者の一人であり、日々の生活で『MARS』の進化を体感できたらうれしいですよね。それまでには、我々のチームでしっかりと全体構想をまとめ、社内で認められ、JR各社にご提案し、信頼性の高いシステムとしてつくりあげるという、いくつもの難関を乗り越えなければなりません。
また、現在はシステムエンジニアの立場で次の『MARS』の検討に取り組んでいますが、『MARS』の開発では、お客さまであるJR各社と直に接してニーズを掘り起こし、既存機能の改善策の提案や、鉄道業界の将来を見据えたシステム構想を企画する、営業系のグループも重要な役割を担っています。こうした仕事も経験して、鉄道業界の未来に貢献する企画の提案や推進ができる人材に成長できればと考えています。